植物は環境次第で育ち、花を咲かせ、実がなります。脳神経は植物のように育む必要があります。
日々の生活の中でヒントにして頂ければと思い、私自身の取り組み方などを綴っています。 

2025年11月

遊び感覚

 十月にはノーベル生理学医学賞が坂口志文氏、化学賞が北川進氏に贈られることになりました。これで日本のノーベル賞は計30となりました。とても喜ばしいことですが、歴代のノーベル賞を受賞された方々の言葉には、「おもしろくて、やっているうちに運に恵まれた」、という主旨が多くみられます。これは学問に限らず、スポーツや商いなどでも一流になられた方々が口にされます。つまり、熱中して遊んでいるうちにいつの間にか結果が伴ってきたというものです。

 

 「遊んでばかりいないで、もっと真面目に取り組みなさい」と言われた経験をお持ちの方も多いと思いますが、実は遊びと真面目の区別はとても曖昧なのです。オランダの歴史哲学者のヨハン・ホイジンガは「人間は遊びによって文化を形成して、進化してきた」と唱え、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)という名付けをしました。あらゆる文化は遊びが先行しており、たとえ宗教的儀式でもそうである、と主張しています。動物は皆、生きるために本能的に遊びが必要で、じゃれあっている幼い動物たちはとても微笑ましいものです。人間はそこから発展させて、様々な文化を作り上げてきました。一朝一夕の作品ではなく、長い年月をかけて美しく仕上げていったものが文化であり、さらにそれを発展させているのです。その原動力が遊び感覚です。

 

 遊びにはその時々でルールがあります。これがないのは遊びではなく、それこそ不真面目なもので、発展もありません。ただし、そのルールは与えられたものではなく、自ら作るルールであり、変化していくものです。またその遊びは、はた目には、可笑しな様子かもしれませんが、真剣にやるものです。しかしやっているうちに、一つの規則や形式が定まり、それが美的に優れたものになっていくのです。

 

 先日、大リーグの大谷翔平選手が、10奪三振、3ホームランという唖然とするような活躍をしましたが、「試してみたいことがあったので、やってみた」とコメントしていました。これが遊び感覚です。勉強や仕事でも自分なりのルールで試みていくことが必要です。揺らぎながら、次第に安定して心地よいものになっていきます。ノーベル賞も失敗から生まれた発見が多いようです。未完成から始まります。

 

 完璧を目指さず、一つ遊んでみよう、と自分に掛け声をかけて始めましょう。

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